850年1月12日付〈赤光〉
昨年、ソサエティ設立に関する新協定の調印式が行われ、ソサエティがその活動を再開することが明確になった。新協定の旧協定との差異は、「首脳会議の開催を5年に一度とする規定を削除したこと」「参加国のリストを条文から外したこと」「常設の事務局を設け、ソサエティへの参加・脱退の手続きを明確化したこと」の3点であるとみられる。ソサエティは「所属同盟を等しくしない多数国による協議組織」としてフリューゲル国際連合(FUN)総会に類似した性質を有しており、フリューゲル国際連合が正式な発足を目前に控えた現時点においてこれが機能を再開することはなかなかに示唆的である。もちろん、FUNはその機関として、法的拘束力を有する決定やその実行のための判断を行うことのできる安全保障理事会を有しており、FUNそのものとソサエティを単純に比較することはできない。ここではFUN総会とソサエティの間の類似点や相違点について、検討してみたいと思う。
ソサエティがその首脳会議において対象とする内容については、新協定第1条において「政治、経済、安全保障など国際社会が抱える問題」とされており、参加国同士の関係にとどまらず全フリューゲルにおいて普遍的な議論がなされることがここから読み取れる。実際、過去の第4回ソサエティ(660年)において採択された「貿易ルールに関する声明」をはじめとしたソサエティの声明は国際社会全体についてある種の普遍的な価値観の受け入れを求めるものが多く含まれている。FUN総会もこのような「国際の平和と安定と繁栄のための普遍的な価値観」を決議によって策定するためのものであり、この目的において両組織は共通しているとも捉えうるであろう。実際、「貿易ルールに関する声明」において言及されている「適切なレートでの取引」「極端な貿易制限の抑制」といった内容は、「国際交易における配慮の枠組みに関する共同声明(820年)」でも引用されており、このような普遍的な価値観の先駆的な提唱者としてのソサエティの歴史的意義は大きい。
一方で、ソサエティとFUN総会の最大の相違点は、その議場への参加の難易である。新協定第6条ではソサエティへの新規加盟には既存加盟国全ての同意が必要とされており、ソサエティ加盟国全てと良好な関係を築いていなければ参加は難しいだろう。事実、ソサエティ設立後のフリューゲルはソサエティ非加盟の主要先進国としてアルドラド帝国、エルツ帝国、石動第三帝国などの諸国が存在していたが、これらの国々がソサエティに参加することはなかった。一方FUNは「平和愛好国」である限りあらゆる国家にその門戸を開いており、加盟手続きにおいては安保理か総会のいずれかが認めればいいため、事実上「世界の過半数の国家に平和愛好国ではないと認識される」という極端なケースを除けば加盟は認められることになる。このような差異は、どうしても「陣営化」から脱することができなかったソサエティにおいて提唱された「全フリューゲル的な共通価値観」をFUN総会において取り入れていくことを可能とするものであろう。
共和国政府は、旧共和国時代のソサエティに対する単純な敵対意識をもはや引き継いでいくべきではなく、その「価値観の提唱者」としての先駆性を認め、ソサエティが初めに唱えた価値観について、それをFUN総会において「真の国際社会の共通理念」と成しうるかどうか検討すべきであろう。もちろん、共和国はソサエティの加盟国ではないため、その提唱する価値観が真に普遍的であるのかについては慎重に検討し、FUN総会における議論に付す必要があることは言うまでもない。別の視点から見れば、FUN総会にはソサエティに欠けていた「普遍化のための議論と検討」のために有意義な働きが可能であり、そのような働きを為さしめていくための責任が、共和国には課せられていると言えるのであろう。
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